本日 76 人 - 昨日 12 人 - 累計 58866 人

連休直前の気まぐれ 9-2 (常寂光寺)

 我が家の宗派は日蓮宗である。
京都では浄土宗・浄土真宗の末寺が約2割強を占め、曹洞宗、本願寺派、と続き、百数十寺院もある日蓮宗ですら漸くこれに続くようだ。
恥ずかしながら私は京の日蓮宗(法華宗)と言えば本能寺くらいしか思い浮かばない。
今まで幾度と京都へは足を運び散策を重ね合掌してきたが、日蓮宗の寺院には一度として足を運んでいなかった。

と言うわけで思い付きの気まぐれTripではあるが、日蓮宗の寺院は訪れようと決めていた。
新緑青葉の小倉山二尊院を訪れる道筋に日蓮宗の小倉山常寂光寺があるのは都合が良かった。
そして大徳寺黄梅院が特別拝観を行っていたのでここを訪れ、ついでに改修が終わる高桐院を巡る予定での上洛になった。

前回ここを訪れた時は、トロッコ嵐山駅から祇王寺に向かう一本道には訪日外国人の姿は気にならぬ程だったが、二年近く経つ間に大分様子が変わった。
常寂光寺山門至る所に欧米人の姿(白人)が目に付く。

常寂光寺の山門は新緑の中にあった。
日蓮宗の寺にしては粗末な造りの山門は、閉門しても両脇の角柱が空いているため参道がその仁王門まま見えてしまう。

山門を抜けるとその先には仁王門が青葉の中に埋もれる様に建っていた。
門の屋根が茅葺のためか、変に主張せず自然に溶け込んでいる。
仁王門から望む仁王門の先には本堂へと向かう石段が真っすぐ天空へ延びる様に見え、異空間への入口の様な不思議な光景を創り出している。

常寂光寺本堂急な石段を上り詰めると直ぐそこに本堂がある。
掲げてある額が無ければ、どこかの料亭か山荘に見間違えてもおかしくない雰囲気だ。

寺の概要をスマホで見てみる。
開山した日禎上人が小倉山の中腹に隠遁所を作ったのが常寂光寺の始まりとある。
どうりで寺らしからぬ雰囲気と納得した。

更に日禎上人の人脈には時の名立たる大名も居て、彼らからの寄付があり隠遁所から寺院へ昇格したとあった。
料亭か山荘にも見える本堂は、小早川秀明の助力を受けて桃山城客殿を移築した物で、入口の仁王門は日禎上人が出た本圀寺客殿の南門を移築した物とある。

日禎上人は、わずか18歳で日蓮宗「西の祖山」と呼ばれた大本山である本圀寺の16世住職となったと伝えられており、今流に言えば若くしてその人脈から、かなりのやり手であった事を想像させる。
多宝塔を見上げる    多宝塔    多宝塔より南禅寺方面を望む
本堂の裏手小高い所には、寺のシンボルでもある多宝塔が建ち、京都市内南禅寺方面まで一望できる。

小倉山の東斜面に、自然に溶け込む山荘の様な日蓮宗の寺があることを知ったのは収穫だった。
境内は京都寺院には欠かせぬ楓と苔が溢れ、その緑を目にするだけで心静かになる。
私の中で四季を通じて訪れるのが楽しみな寺の一つになった。