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 方丈の脇を通り大寂門(北門)から一般道に出る。
紅葉で知られる禅林寺の前を素通りして先の路地を右に折れると、だらだらとした上り坂だ。

禅林寺      IMG_2414

上りきると琵琶湖疏水分線が南北に走り、それに沿った管理用の歩道が「哲学の道」と呼ばれている。
哲学の道呼ばれ方が「哲学の道」に落ち着いたのは住民の保存運動からだそうだが、それまでは「文人の道」「哲学の小径」「散策の道」「思索の道」「疏水の小径」など様々な名の時期があったようだ。

それにしても日差しが強い、東山慈照寺から流れて来たのだろうか、すれ違う訪日異国人等もタオルを頭に被ったり、シャツの襟元を大きく開いたりと、この蒸し暑さに参った様子で歩いてくる。やっぱり京都は暑い!!
如何に京大の哲学者であっても、このくそ暑い中を思案を巡らして散歩など絶対にやってない、と思いつつ川沿いの木陰を選びながら哲学の道を歩いた。
梅雨の隙をついて京都に来たつもりだったのだが、京都にいる間に梅雨は明けてしまったようだ。準備してきたレインウェアーが重く感じる。

今回京都を訪れた目的の一つ「あそこの店の和菓子も食いてぇ」と楽しみにしていた店は
先の交差する道を左に、坂を下りた鹿ヶ谷通り沿いにある。
周囲には目立って土産屋や商店も無く、人通りが少ない閑散とした街並みの中に目立たぬ佇まいで、うっかりすると見落としてしまいそうな構えである。
ご主人は京菓子司「末富」で修行の後に暖簾を出し、店を構えるにあたって周囲に菓子店が無い地を探し、今の場所になったと何かの記事で目にした記憶がある。

そろそろ昼時で腹も空いた。
目的の菓子店は昼食の後に寄ることにして、菓子店方向とは反対の右に坂を上り法然院脇の路地角にある豆腐屋で食事にする。
店の歴史はそう古くはないが、舌触りのよい豆腐を食わせてくれることでそこそこ名が知られている。
そこそことは失礼ではあるが、きどった雰囲気は無く、むしろ入りやすい店の雰囲気に私的には好感がもてる。
気取った如何にも高い豆腐を食わせる店が好みの吾人にはお勧め出来ない店だ。
座敷には欧米からの訪日客だろうか、三組程が湯豆腐を慣れた箸使いで談笑しながら食べている。
仲居さんに「この暑さでも皆さん湯豆腐を注文されるのですか」と尋ねると、そうですねの後に「奴で準備できますよ」と言われたので即答でお願いしますと注文した。
何が何でも湯豆腐が売りと嵯峨野や南禅寺とは違う対応に好感が増す。
湯豆腐で頂けば香りや甘さが起つのだが、奴でも舌触りが滑らかな豆腐を十分楽しめた。

腹も満たされ、来た坂道を鹿ヶ谷通りまで下った。
菓子店に入り声を掛けると、奥さんが口元を隠しながら出てきたので、食事中だった様だ。
申し訳なく一言ことわりを入れ菓子を選ぶ。
丁度六月から七月の菓子に変り、涼しげな色彩の菓子もショーケースに並べられていた。
水牡丹、琥珀糖、石竹、夏野を選ぶと菓子の素材の説明と最後に日持ちしないので出来れば今日中に召し上げって下さいと一言。
葛を使った菓子は冷蔵庫に入れてしまうと食感を失ってしまうとか、生菓子ゆえ夏場の問題もあり良い状態で食べて欲しいとの意もあるのだろう。
店を出ると入れ替わりに女性が来店した。
年配ではないが若くも無い、薄手の白いノースリーブの上に白いレースの上着か羽織物姿で白のレースっぽい日傘姿だった。
暖簾をくぐり京都弁の挨拶で店内に入って行く姿をみて画に成るなぁと一人悦に入っていた。

再び来た坂道を戻り法然院脇の路地より東山慈照寺に向かう。
間もなく慈照寺総門の脇に出る。哲学の道を行くよりはるかに近道である。
何十年ぶりに訪れただろうか、時を経ても制服姿の学生が多く目につく。
当時と違うのは学生服姿をしのぐ異国観光客が多いことだろう。

北東側から見る銀閣生垣の前を通り中門前の拝観受付を済まし境内に入ると、右手に銀閣が見える。
名の由来が金閣に対し銀閣と実に曖昧だが、構造も不思議ではないだろうか。
下層が住宅風の造りに対し上層は仏堂風。
胴差しの上に改めて土台を築き管柱で上層部分を構成している様に見え、北東に位置する銀沙灘側からは実にバランスの悪い建物に思える。

IMG_2417幾度の調査で手が加えられた形跡が見つかったりと細々不明な点が有るらしいが、専門的な事については深い興味があるわけでも無いので素人の独り言で済ませたい。
拝観者が多く落ち着ける様子ではないので早々に境内をでて出町柳に向かうことにした。



正直に言うと東山に来た目的は菓子屋と豆腐屋であり、そこへ行くのであればついでに哲学の道と東山慈照寺も周って行こうと思いつきであった。

IMG_8426高野川と鴨川が合流する賀茂大橋を徒歩で渡り交差点を右折すると、右に「いせはん」の看板、通りの向かいには「出町ふたば」の行列が目に入る。
「いせはん」の店先に入店待ちの人影が無かったので「いせはん」に入ることにした。
狭い店内は若い客が多くnetの口コミ効果を実感する。実を言えば若くはないが私もその一人である(苦笑)

特製あんみつ評判の特製あんみつを注文した。
抹茶の色使いが華やかで豪華にみえるところはSNSで多く見かける理由が判る気がした。
味は角の無い甘み(まろやか、ポワッとした)と言えばよいのか、主張の強いあんの甘さではない。
大粒で形がしっかりした甘味控えめの小豆は気に入った。
来店して直ぐに席に付けたのは幸運だったのだろう。気が付けば二三組の入店待ちの客が外に立っていた。
常に店内は満席で落ち着くなどとんでもない雰囲気であったので席を立つことにする。
時間も丁度良く、通りの向かいにあった葵橋西詰バス停より京都駅に向かった。

京都駅までは40分弱で到着。預けた荷物を引き取り新幹線ホームの待合所で一息つく。
雨を覚悟しての京都行だったが、散策の間は天気に恵まれ準備してきた雨具の出番は無かった。
祇園祭の前でもあったし、団体客と遭遇する事も無く、目的以上に楽しんだ3日間だった。
欲を言えば大徳寺の塔頭「高桐院」を廻りたかったのだが、本堂の屋根瓦の葺き替え工事などのため、来年3月末までの拝観が休止されていて諦めるしかなかった。

お茶を買い新幹線に乗る。
楽しみは最後にとっておく派、和菓子の包を解きお気に入りの菓子を頂く。
しつこくないほんのりとした甘さが口の中に広がる。
もっちりした葛の食感と品の良い甘さの餡。
琥珀羹の弾力ある食感。
道明寺羹の程よい弾力の食感と白小豆のさっぱりとした甘さ。
どれもしっかりと作りこまれた京都の正統派菓子に大満足。
次回いつに成るか、訪れるほどに楽しみが増える京都を後に帰途へついた。